琵琶湖の天然ウナギ 沖島の漁師料理の店・「瀬戸や」
今回のごちそう紀行は、
琵琶湖の天然ウナギを食べさせてくれる、沖島の漁師料理の店・「瀬戸や」さんです。

鰻とり名人・西居政人さん
琵琶湖に浮かぶ沖島は人口約500人の小さな漁師町。ここの「瀬戸や」は、獲れたての魚を食べさせてくれることで知る人ぞ知る。
琵琶湖でウナギが獲れるのは沖島から長浜沖ぐらいのエリアだとか。今回は島一番のウナギ漁の名人・西居政人さんに同行。前日に延縄を仕掛けたポイントに着くと、さっそく名人は馴れた手つきで糸をたぐりはじめた。

例年より漁獲量が少ないとのことだが、しばらくすると次々とウナギが上がってきた。普通、養殖ウナギの腹は白いが、天然ウナギの腹は黄色っぽく表面にはラードのような脂が付いていて、違いがすぐに分かった。この日は20匹ほどのウナギをゲット。


秘伝のタレと炭火でいただく
島に帰り、さっそく「瀬戸や」の板前、奥村さんに料理してもらった。


子供のころから魚と共に生きてきた奥村さんの手さばきは豪快そのもの。
さっそく炭火で焼いてもらったが、脂が火の上に落ち、たちまち辺りは香ばしい匂いに包まれた。
蒲焼に欠かせないのがタレ。島にはそれぞれの家に秘伝のタレが伝わっているとのこと。奥村家の秘伝のタレで焼きあげられた蒲焼はふっくらと口の中いっぱいに広がった。皮が柔らかく、脂が乗っているわりにはさっぱりした味が何とも言えない。
炭火の匂い、秘伝のタレ、ふっくらとした白い身…天然ウナギのおいしさを存分に味わうことができた。
(取材・大岩)
瀬戸や
1人前:3,500~5,000円(税込) 要予約2人以上
近江八幡市沖島町230
0748-33-9629(久田忍) 0748-33-9744(奥村敏弘)
沖島の西居名人がとった天然ウナギ
白焼き:2匹 5,000~6,500円(税込)
蒲焼(タレつき):2匹 5,000~6,500円(税込)

お申込:
KDD(株)食品事業部
TEL:077-589-2354 FAX:077-589-4892
湖国ごちそう紀行 より転載

2005年4月1日
大阪~京都~滋賀、とっておきの味めぐり 
日本で唯一、湖に浮かぶ有人島


滋賀県・近江八幡市の対岸から約2キロの距離にある沖島は、日本で唯一、湖に浮かぶ有人島として知られている。人口は約450名。湖にある島でこれだけの人口がある場所は、世界でも稀なのだそうだ。

 近江八幡駅から車で20分。沖島への通船は堀切新港という港から出ている。ここには何十隻もの船が停泊、沖島住民たちのパーキングのような役割を果たしている。「島の住民は1家に1隻、船を持っているからね。車がわりだよ」。港で出逢った島の住民が教えてくれた。

 中高生や観光客は、乗り合いの船で行き来する。20名乗れば満席になりそうな小さな船は、波を跳ね上げながら沖島港へと向かっていく。湖と聞くと、波穏やかというイメージがあったのだが、さすがに日本一の湖、船室の窓を打ちつけるほどの波が立っている。

 約10分で沖島港へ到着。港の近くには、木造民家が並び、いかにも漁村らしいたたずまい。すぐそばにあるコンクリートの建物は漁業会館。ここに、机を置いただけの小さな売店が出ていた。「沖島湖島婦貴の会」(おきしまことぶきのかい)という、婦人部30数名がやっている売店だ。

 机の上にはお手玉やワラジなど手作り小物が数点並んでいる。「魚は奥にしまってあるのよ」、お客さんが来ると、奥から商品を運び出してくれる。「これはワカサギ、こっちはイシ貝、エビ豆にハス」。ワカサギ以外、初めて目にするものばかり。どれも琵琶湖でとれた魚を佃煮風に加工したものなのだそうだ。
漁業会館で小さな売店を
開いている婦人部のみな
さん。まさに手作りの品々が並んでいた

港から左へと向かい民家の中へと進んでいく。2階建ての家がぎっしりと密集していて、道は人1人がやっと通れるぐらいの細さ。「島には車は1台もない」とは聞いていたが、確かにこの道幅だと車は必要ない。すぐそこの窓辺に洗濯物が干してあったり、戸口でお米をとぐおばあちゃんの姿があったり、初めて来た場所なのに、なぜか懐かしさがこみ上げてくる。昔の日本がそのままここに残っているといった印象なのだ。

 路地を進んで数分で湖の反対側へと出る。こちらは湖岸すぐに道があり、家が並んでいる。歩いていても時折、波しぶきが飛んできて、思わず足がすくんでしまいそうになる。湖に面した民家の1軒が目指す食事処「瀬戸や」。小さな看板を見つけ、ほっと安心、「こんにちは」と声を掛けた。

こんな細い路地の間を
歩いていく。迷路に迷い
込んだような不思議な
感覚にとらわれてしまった
琵琶湖・沖島で湖国の春をいただく
「このフナ、臭いと感じた人にはお金を返します」

「瀬戸や」は、3年前、あるテレビ番組から誕生した食事処。親戚にあたる久田さん・奥村さん夫婦4人で切り盛りしている。食事場所は久田さんの家のお座敷。予約をしておいたため、すでにずらりと料理が並んでいる。「あとは揚げ物やみそ汁を作るだけ。少し待っていてくださいね」と奥村さん。調理場は別棟。そちらにもおじゃまして、作るところを見せていただいた。

 調理場では久田さん夫婦が揚げ物の準備をしていた。「これはカジカ、こっちはイサザにワカサギ。切り身になっているのは鯉。鯉は下味を付けて揚げるんです」とご主人。カジカもイサザも指の長さぐらいの小さな魚。頭ごと食べられる。隣では奥さんがみそ汁の準備中。「これ琵琶湖でとれたシジミなの。いい味が出るのよ」。ぷっくり丸い形をしたシジミは、色も黒く、輸入物とは違う貝のようだ。

料理をする奥村さんご夫婦。
自分たちがとってきたもの
だけに、1品ずつ愛情を持
って調理している様子が
うかがえた。

 お座敷に帰り、できあがった料理を説明してもらう。今回は5000円のメニューをお願いした。「5000円だと15品。モロコの焼き物や鮒鮨、ニゴロブナのタタキ、鯉の刺身にワカサギの南蛮、チグエビの唐揚げにイシ貝の佃煮、鯉の甘露煮、シジミのみそ汁、今作っている揚げ物。3品盛りになっているのは小魚とエビ豆、小ハスです。これにカボチャの煮付けやサラダ、ご飯、漬け物が付きます」。

 魚介はすべて琵琶湖産。久田さんと奥村さんがとってきた紛いのない天然ものだ。「メニューは、日によって変わってくるんです。5月に入るととれる魚も変わってきて、天然うなぎの造りやら蒲焼きなども出てきます」。

衝撃の味だったフナのタタキ。生臭さがなくきれいな水の
香りがした
 座卓一面に並ぶ魚・魚・魚…。そのほとんどが初めて口にするものばかり。まずは馴染みのある鯉の甘露煮から。10センチはあろうかという厚みの甘露煮は、中までしっかり味がしみている。臭みはまったくない。身の間には白子が入っていて、ねっとり舌に絡みつく。これはおいしい!

 お次はフナのタタキ。生のフナということで恐る恐る口に運んだのだが…。いや、驚いた! 生臭さが微塵もないのだ。きれいな水の香りと淡泊な旨味がつまっていて、食べているうちにこれがフナであるということを忘れてしまう。「タタキはオスのフナなんです。メスは鮒鮨にするんですよ。フナは臭いと思ってる人が多いんですが、ウチのはとれたてなので臭みがない。臭いと感じた方にはお金を返しますよ」と久田さん。

 鯉の刺身も同様。こりこりとした身は何もつけなくても食べられるほど新鮮だ。「鯉は酢みそで食べるところが多いですが、それは身の臭みを消すため。ウチのはワサビ醤油だけで十分なんです」。
テーブルが見えないほどの量。これで5000円(1人前)。
食べきれない人のため持ち
帰り用のパックも用意
 アサリをさらに濃くしたような旨味があるイシ貝、子持ちのワカサギに、やわらかな白身のモロコ、クセになりそうな鮒鮨…。今まで抱いていた淡水魚のイメージがお腹の底からひっくり返った。とれたてをいただくというのが足の早い淡水魚の場合、特に大切なのだろう。便利とは言い難い場所ではあるが、ぜひぜひ足を運んで、自分の舌で味わってみて欲しい。
子ふなのたたき、、、通称 沖島の方言でジョギといわれている
寒い冬場のさかなはおいしい、12月10ごろ~3月末まで(水深80mの深水に住んでいるふなである)
  4月になると少しづつ浅い水深にやってくる そのあさせに近寄ってきた魚は味が落ちる

 ジョギは3月までに食べると最高の味がする
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